
「時計業界の今って、実際どうなってるの?」と気になっているあなたへ。
セイコー・シチズン・カシオの2024年度決算(2025年3月期)をもとに、
それぞれの“売れてる度・儲かってる度・これからどうなるか”を、
数字と図でスッキリ整理してまとめました。
数字で見る、国産時計メーカーの“実力差”とは?
国産の三巨頭といえば、セイコー・シチズン・カシオ。
でも「結局どこが一番伸びてるの?」って、なんとなくで語っていませんか?
今回は、そんなモヤっとを解消すべく、
数字の背景にある“動き”や“戦略”も読み解きながら
“いま注目すべきブランド”がどこかを一気にチェックしていきます。
- グランドセイコーはどこまで伸びた?
- シチズンは利益が減ったって本当?
- カシオはランサムウェアから復活できたのか?
そんな業界のリアルが、
「なんとなく」から「なるほど!」に変わるかもしれません。で読める構成+要点まとめで解説していきます!
【図解】2024年度 決算スコアボード(売上・営業利益・純利益)
メーカー | 売上高 (億円) | 営業利益 (億円) | 純利益 (億円) | 前年比(営業利益) | ひとことコメント |
---|---|---|---|---|---|
セイコー | 3,047 | 212.4 | 133.2 | +44.1% | インバウンド効果+高級路線で絶好調! |
シチズン | 3,168 | 205.9 | 238.8 | -17.9% | 純利益は過去最高。でも本業は失速ぎみ |
カシオ | 2,617 | 142.4 | 80.6 | +0.2% | サイバー攻撃にやられたが耐えた! |
セイコー:好調の理由は「高級路線×システム事業」
2024年度、セイコーは売上3,047億円(前年比+10.1%)、営業利益212億円(+44.1%)と、3社の中でもダントツの成長を見せました。
EVS事業(ウオッチ&和光)
- グランドセイコーやプレザージュの高価格帯モデルが絶好調!
- SEIKO HOUSE GINZAが発信拠点としても機能し、ブランド価値を高めた印象。
- 和光の売上も堅調で、固定費の高いビジネスモデルでも客数増で収益性アップ。

SS事業(ICT・IoTなど)
- システム事業がEVS事業やDS事業の景気リスクをヘッジする安定収益源に。
- M&Aの効果でITインフラやセキュリティ関連の需要が急拡大。
- IoTビジネスも堅調で、36四半期連続で前年同四半期比増収増益を達成。
今後の見通し
2025年度は売上3,120億円、営業利益225億円の予想。中期経営計画「SMILE145」では、2026年度に営業利益300億円・利益率10%という高い目標を掲げています。

▶ 詳しい数値やプレゼン資料は、セイコーグループ公式のIR資料ページで確認できます。
シチズン:売上は微増、でも“儲け”が減った理由は?
2024年度のシチズンは売上3,168億円(+1.3%)とわずかに増収でしたが、営業利益は205.9億円(-17.9%)と大幅に減益。
時計事業
- クロスシーやザ・シチズンなど高付加価値ラインは堅調!
- 主力のメンズブランド「アテッサ」はやや減速。
- 北米・欧州は好調だったが、日本国内のインバウンド効果が期待ほど伸びなかったのも響いた。

近年は機械式時計にも本格的に力を入れている。
工作機械事業
- 売上743億円(-9.0%)、営業利益56億円(-37.2%)と大幅な減収減益。
- 自動車業界の設備投資が停滞し、国内外ともに苦戦。
- 中国向けが増え国内が減ったことで、利益率が悪化した可能性も。
純利益が増えてる理由は?
- 営業利益は減ったのに、純利益は238.8億円と過去最高を記録。
- これは資産売却益などの一時的な特別利益が上乗せされたことによる“見かけ上の増益”。
- 2025年度は純利益200億円(-16.2%)予想となっており、本業の実力が問われる1年になりそう。
今後の戦略:グローバル展開&事業再編がカギ
- 工作機械事業はインド市場など新興国開拓と技術革新で受注回復を狙う。
- アテッサを海外展開(2025年度〜)し、グローバルサブブランド比率を35%へ引き上げ。
- ザ・シチズンも2027年度中にグローバル展開をスタート。
- 北米市場では直販EC+高価格モデルで勝負。
▶ シチズンの決算資料や補足説明は、シチズン公式IRページで確認できます。
カシオ:ランサムウェアでピンチ…でも2025年は“大逆転”なるか?
2024年度のカシオは、売上2,617億円(-2.6%)と3社中唯一の減収。ただし営業利益は142.4億円(+0.2%)と堅調で、復活に向けた土台づくりが進んでいます。
ランサムウェアの影響が直撃
- 第3四半期(年末商戦期)に約130億円の売上・約40億円の営業利益が吹っ飛んだと推定されています。
- 商品の出荷や修理受付が一時的にストップ。パソコンのシステムも使えず、現場では手作業での対応を強いられるなど混乱が続きました。
- それでも第4四半期には営業利益が125%増となり、見事にリカバリー。
- G-SHOCKの高価格帯モデルが地味に、でもしっかり支えていました。

時計事業は“中国以外”で好調
- G-SHOCKのメタルラインや限定モデルが世界的に人気継続。
- 中国市場は不調だったが、北米(+12%)・欧州(+3%)でカバー。
- 自社ECも好調で、今後のD2C戦略にも追い風。
コンシューマ事業&構造改革
- EdTechは欧州を中心に堅調。
- サウンド(楽器)事業は反動減だったが、赤字幅は縮小。
- 電子辞書やレジスターなど非中核事業からの撤退を進行中。
2025年は“回復の年”になるか
- AIペットロボット「Moflin」など新規事業も視野に。
- G-SHOCK高級ラインの拡充と、新デザインの創出。
- アジア新興国(インド・ASEAN)での販売拡大。
- ClassPad.netなどEdTechのデジタル領域強化。
▶ カシオの決算資料や補足説明は、カシオ公式IRページで確認できます。
各社に共通する「追い風」と「逆風」
ここまで見てきた3社の決算、数字だけを並べるとバラつきがありますが、実は背景には共通する大きな潮流がいくつもあります。
この章では、セイコー・シチズン・カシオそれぞれに影響を与えた「時計業界全体の空気感」を、4つのキーワードで整理してみます。
円安が後押しする「輸出」と「インバウンド」
- 1ドル140〜150円台の円安が続き、海外売上の円換算額が押し上げられた。
- セイコーやカシオはインバウンド消費の回復をうまく取り込んだ一方で、シチズンはやや出遅れ感。
- 一方で原価や物流コストも上がっており、円安=単純な追い風とは言い切れない複雑さも。
中国市場の鈍化は全社に響いた
- 各社とも中国での売上が苦戦。
- 消費マインドの変化や経済の不透明感も影響して、売上の回復が鈍い。
- その分、北米・欧州・東南アジアへの展開強化が次の一手に。
高級ウオッチへの流れは加速中
- セイコーのグランドセイコー、シチズンのザ・シチズン、カシオのG-SHOCK高級ラインなど、どの社も「高価格帯」に注力。
- ただの“時計”ではなく、「意味」や「価値」が伝わる時計が売れる時代に。
- この戦略の成功が、業績の明暗を分けるカギにもなっている。
時計以外の“もう一つの柱”が勝敗を分ける
- セイコーはSS事業(IoT・セキュリティ)が好調で、リスク分散に成功。
- シチズンは工作機械の落ち込みが足を引っ張ったが、中計で立て直しを狙う。
- カシオはコンシューマ事業を構造改革中。非中核の整理とEdTechが勝負どころ。
こうして見ると、3社の違いがありつつも、同じ波の中でどう舵を切るかが分かれ目だったのがよくわかります。
2025年度はどうなる?各社の“未来予想図”を比較!
2024年度は三者三様だったセイコー・シチズン・カシオですが、すでに発表されている2025年3月期の業績予想を比べてみると、また別の表情が見えてきます。
【表】2025年3月期 業績予想(各社発表ベース)
メーカー | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) | 前年比(営業利益) | コメント |
---|---|---|---|---|---|
セイコー | 3,120 | 225 | 145 | +5.9% | 為替は保守的な想定(1ドル=140円)。上振れ余地あり。 |
シチズン | 3,180 | 200 | 200 | -2.9% | 資産売却の特需がなくなり、本業勝負の1年に。 |
カシオ | 2,700 | 240 | 165 | +68.6% | “復活の年”へ。構造改革の成果に注目が集まる。 |
セイコー:堅実な伸びでさらに安定へ
- 営業利益225億円(+6.0%)を見込み、円安追い風でさらに上振れ余地あり。
- グランドセイコーやIoT関連事業の成長がカギ。
- 中期計画「SMILE145」に向け、盤石な経営体制をアピール。
シチズン:真価が問われる勝負の年
- 営業利益は200億円(-2.9%)予想。一時的な利益の反動減を受ける形に。
- 工作機械の反発、時計の海外展開がカギ。
- 中期計画「2027」に向け、再成長のスタートラインに立つ年。
カシオ:大逆転狙う“復活の年”
- 営業利益は前年比+68.6%の240億円予想!
- G-SHOCKの高級路線+EdTech事業が再成長の柱に。
- “選択と集中”の成果が見えるかどうかが焦点。
それぞれ異なる道を歩む3社ですが、2025年度は「安定を磨くセイコー」「反転を狙うカシオ」「再構築を進めるシチズン」という構図になりそうです。
まとめ:数字から見えた「国産3社」の今とこれから
セイコー・シチズン・カシオ──同じ「国産時計メーカー」でも、その立ち位置や戦い方は実にさまざまでした。
- セイコーはインバウンド・高級化の波に乗り、次の柱(IoT事業)も育成中。
- シチズンは課題も多いけど、グローバル展開と再構築で立て直しへ。
- カシオはサイバー攻撃を乗り越え、構造改革から再成長を狙うタイミング。
どのメーカーにも「応援したくなるストーリー」があって、どのブランドにも「今、手に取る意味」があります。
数字や戦略を知った上で時計を選ぶと、ちょっとだけその時計が特別に思えてくるかもしれません。
あなたが気になったのは、どのブランド?
- 「やっぱり安定して強いセイコー」
- 「静かに熱い挑戦をしてるシチズン」
- 「逆境からの巻き返しを狙うカシオ」
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※本記事で使用している画像は、各ブランドの公式サイトより引用しています。
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